12月、今年も残すところ残り1ヶ月です。
暦の一つには、本格的な冬の始まりを知らせる「大雪(たいせつ)」があり、今年は12月7日です。
大雪とは、雪が盛んに降りだす頃という意味で、山の峰々は雪をかぶり、平地にも雪が降る時期を指し、その名のごとく大雪(おおゆき)になる地域もあります。
大雪を迎えることに脂をたっぷりと蓄え、美味しくなる魚がいます。
寒いころに美味しくなる魚介で有名なのものにはブリ、ヒラメ、カキ、ズワイガニなどがありますが、今回は、ちょっとマイナーなお魚「ボラ」のご紹介です。
ボラとは?
ボラといえば、水面近くを泳ぎ回り、ジャンプする姿が印象的です。
成長するにつれて名前が変わる出世魚であり、成長する順に「オボコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド」の順で呼ばれています。
食用の魚としてはマイナーですが、名前は慣用句や諺などにも使われ、とどのつまり=「結局」「行きつくところ」→「トド」は「これ以上大きくならない」ことから、「いなせ」=勢いがよく、少し斜に構えた様子→「イナ」は若い衆の月代の青々とした剃り跡をイナの青灰色でざらついた背中に見たてたことから(若い衆が粋さを見せるために跳ね上げた髷の形をイナの背びれの形にたとえた」との説もある。)、「おぼこい」=子どもなどの幼い様子、可愛いこと→「おぼこ」がボラの幼魚の呼び名であることから、などがあり古くから親しまれてきた魚です。
ボラは海水から汽水域まで生息するため、沿岸地域から河川まで多く見られますが、夏場は汽水域にいることが多く、水質など影響から臭みが強いと言われ、敬遠されることが多いようです。しかし、海水に生息するものは臭みもなく、秋~冬頃には産卵期を迎え、食欲が旺盛になるため脂が乗り「寒ボラ」と呼ばれて、とても美味しくなります。
昔は河川が汚れていることもないため、1年中食べられていたのでしょうが、人の都合で勝手に好き嫌いされて、ボラもいい迷惑でしょう。
また、ボラの卵巣は、日本三大珍味のひとつでもあるカラスミとなります。さらに筋肉が発達した幽門「ヘソ」と呼ばれる部分は、知る人ぞ知る珍味として、地域によっては単独で流通もしています。
分類
標準和名 ボラ
特徴
分布域・生態
世界中の熱帯・温帯の海に広く分布しており、国内では北海道以南に分布しています。
沿岸域の浅所や河川下流域に生息し、春から夏にかけては群れをなして内湾に来遊し河川下流域に密集し、冬場には深場に移動します。港や河口付近で群れになって泳いだり、水面をジャンプする習性があります。
雑食性で、有機堆積物、藻類、甲殻類や多毛類などを食べますが、このうち有機堆積物や藻類を食べると臭いが強くなると考えられています。
ここ瀬戸内海では、定置網や五智網によって漁獲されています。
漁期
通年獲れますが、瀬戸内海では、春頃に群れで内湾にやってくるときに多く漁獲されます。また、旬は、10~1月頃であり、この海水温が低い時期に獲れるものは「寒ボラ」と呼ばれ、脂乗りが良いものが水揚げされます。
※地域によりずれが生じます。
目利きのポイント
丸のまま購入される場合
なるべく大きいもので、できれば活〆されているものがいいですが、難しい場合は、眼に透明感があり、黒眼がくっきりとしているもの、エラが鮮やかな赤い色をしているものにしましょう。
綺麗な水のところで獲れたものは臭みもなく美味しいので、産地や漁獲場所はチェックする必要がありますが、難しい場合は、捌いた時に試食してみたりするなどして、鮮度だけで判断するのは避けた方が良いかもしれません。
切身で購入する場合
皮目の銀白色が綺麗に残っており、色落ちしていないもの、身に張りがあり透明感のあるものがよいでしょう。
トレーなどにドリップや血が沢山ついているものは、元々の処理が悪いか鮮度落ちしている可能性が高いのでお勧めできません。
おすすめの食べ方
淡白で、ほどよい歯応えがあり、甘味もあります。
鮮度が良いものは刺身でもいただけます。
基本的にどんな料理にもあいますが、脂がのるとはいっても、サバやブリのような青魚ほどではありませんので、煮物、焼物にする際は少し濃いめに味付けされる方が良いかもしれません。
揚物であれば何ら問題はありませんが、皮目や血合いに臭みが残ることがあるので、気になる場合は皮、血合いをしっかりとって調理して下さい。
ボラのお刺身
▼材料(2人前)
・ボラのフィーレ 片身
・大葉 2枚
・大根 適量
・わさび 適量
▼作り方
①ボラのフィーレの骨を取り除き、皮をひく。
➁そぎ切りする。
③お皿に盛り付ける。
ボラのフライ
▼材料(2人前)
・ボラのフィーレ 片身
・塩こしょう 適量
・レタス(添え野菜)適量
・レモン(添え野菜)適量
・小麦粉 適量
・卵 適量
・パン粉 適量
・揚げ油 適量
▼作り方
①ボラのフィーレを一口大に切る。
水気をふき取って塩こしょうを振る。
②①に小麦粉→卵→パン粉の順に衣をつける。
③170~180℃の油で揚げる。
④お皿に盛り付け、レタスとレモンを添える。
ボラの煮付け
▼材料(2人前)
・ボラ(切身) 2切
・生姜 2切
・長ネギ 1/4本
・濃口醤油 大さじ2
・酒 大さじ1
・みりん 大さじ1
・顆粒だし 少々
・水 200ml
▼作り方
①ボラは皮面に切り込み入れておく。
➁鍋に水、砂糖、生姜、ボラを入れて火にかける。
③沸騰したら灰汁を取り、長ねぎ、濃口醤油、みりんを加えて落とし蓋をして煮る。
④煮汁が少なくなったら、お皿に盛り付ける。
ボラのムニエル
▼材料(2人前)
・ボラの切身 2切
・タマネギ 1個
・ニンジン 1/4個
・ブロッコリー 1個
・塩こしょう 少々
・小麦粉 適量
・バター 10g〈トマトソース〉
・タマネギ 1/2個
・ニンジン 1/4個
・塩こしょう 少々
・トマトピューレ 大さじ3
・ミニトマト 5個
・バター 10g
・オリーブオイル 大さじ1
▼作り方
①ボラの切身は水気をふき取って塩こしょうをふり、小麦粉をまぶす。
②フライパンにバターを入れて火にかける。
皮面から焼き、パリッと焼けたら、裏返して蓋をして蒸し焼きにする。
③一旦お皿に取り出す。
④別のフライパンにオリーブオイルを入れて火にかける。
輪切りにしたニンジンとタマネギを入れ、塩こしょうを振り焼いていく。
ブロッコリーは、ゆでておく。
〈トマトソース〉
①別のフライパンにオリーブオイルを入れて熱して、みじん切りにしたタマネギとニンジン、塩こしょうを振り、炒める。
②しっかり炒めたら、トマトピューレとミニトマトを加える。
③バターを加えて混ぜ合わせ、オリーブオイルを加えて、ぐつぐつと火を通す。
・お皿にタマネギとニンジン、ブロッコリーを添え、トマトソースを敷き、ムニエルをのせる。その上にレモンを添える。
※丸のままから調理する場合は、YouTube動画の捌き方をご覧ください。
栄養素
エネルギーは128kcal(マダイは142kcal、スズキは123kcal)で、たんぱく質は19.2g(マダイは20.6g、スズキは19.8g)、脂質が5g(マダイは5.8g、スズキは4.2g)と低エネルギー高たんぱく質低脂質であり、他の白身魚と比べてみても、典型的な白身魚であると言えます。中でもビタミンB群を多く含んでいます。